(と言ったら……もしかしなくても告白ってやつだよな。今日一日ずっと考えたけど、それしかねーよな?)
午後4時。
高校1年生にしては高めの身長を持ち坊主頭。野球部主将こと花井梓は悩んでいた。
悩みと言っても心をズタズタにするだとか、そういう類のものではない。
むしろ嬉しいと思える悩みなのだ。
(お、おれどうすれば・・・ってか自意識過剰なのか・・・?)
遡ること8時間前。
朝練を終え、教室に戻ろうとしていた時のこと。
後ろに気配を感じたと思ったら、膝の力が抜けた。世に言う膝カックンというやつをされたのだった。
「誰だよ!」
そう言って後ろを見ると、そこにはがいた。
「先輩!?」
動揺を隠せない花井を他所に、はにやっと笑って何事もなかったように話し始める。
「今日、放課後、屋上!」
「は?」
「今日野球部あるだろうけど・・・。時間とらせないし、いいでしょ?」
「何がっすか?」
「だーかーらー、今日の放課後、屋上に来いって言ってんの!」
「あぁ。屋上。了解っす。」
「よし!じゃあね!」
そう言って、は元気よく廊下を駆けて行った。
は花井よりも学年が1つ上の先輩である。
委員会がきっかけで、よく話すようになり、試合を見に来たこともある。
はきはきとしているは、よく花井の相談も受けていた。
主将として、4番を争う者として、花井はいろいろな問題にぶつかっていた。
そのときに助けてくれたのが
「先輩」だった。
話を聞いてもらっていただけなのに、なぜか心が落ち着いて楽になった。
それは嫌な顔一つせず話を聞いてくれたの優しさがあったからだと花井は理解していた。
月日は経ち、花井はを先輩としてではなく、一人の女性として意識するようになった。
だからと言って態度を変えるわけでもなく、今まで通りに付き合っていた。
しかし、いきなり屋上への呼び出し。
朝のことを授業中に反芻し、それがどういうことなのかなんとなく理解してしまった花井は、
今日1日授業に集中できるはずがなかった。
放課後、屋上、・・・告白。そんな甘美な響きに酔いしれてしまった。
そして、冒頭に戻る。
放課後になってしまったわけだし、とにかく今は屋上へ行こう。
階段を一段一段踏みしめ、花井はドアの前に立った。
(よし。って何がよしなんだよ!俺!変な期待すんな!)
この期に及んで自分を戒めた花井は、気を引き締め、ドアを開いた。
――――――――――――――――――――――――風が心地良い。
「よっ!」
「どうも。」
花井は、フェンスにもたれかかったを見つけると、近くまで足を進めて目の前に立った。
「えと、なんすか?」
「あー、うん。えっとねー。・・・ええと・・・ね、」
中々言いだせない。その間の花井の頭の中は、悪いことばかりがぐるぐると回っていた。
(これで「私、○○が好きなんだけど協力してくれない?」とか言われたら、ヘコむ。完全にヘコむ。)
「・・・私さ、花井のこと、」
まだ口ごもるの様子を見て、よっぽど悩んだんだろうな、いつもと逆だ、と花井は思う。
いつもは俺が悩んで、うまく話せなくて、口ごもって・・・
でもは話を聞いてくれたし、時にはアドバイスもしてくれた。
は、いつも笑顔で「大丈夫」と言ってくれた・・・・・・・・・
(ちょっと待てよ。俺、思ってた以上にこの人のこと好きだ。)
(こういうことって、女から言わせるべき?)
(いやいや、どうして自分が告白される設定作ってるんだよ)
(でも、俺、告白されようがされまいが、先輩が好き、だ。)
「私、花井のことs」
「好きです」
「・・・・・え?」
「俺、先輩のこと好きです。付き合ってください。」
花井はの目をしっかりと見据えて言った。
(好きだ。先輩が。気持ち伝えられたし…もうどうにでもなれ。
そうだよ。伝えられただけでも、よしとしようじゃないか。)
びゅうっと屋上に風が吹く。
乱れた髪を直しながら、がはにかんだ。
「先に言うなよ。」
(20100810)
花井程「青春」の二文字が似合う子はいないと思う。
|
|