利央がまた泣いている。
先輩にいじめられたのか、兄である呂佳さんに嫌がらせされたのか、理由は定かではない。
「また泣いてる」
「・・・・!先輩?」
「今度は誰に何言われたの?」
休憩中、何処かへ居なくなったと思ったら、草むらに隠れて泣いていた。
タオルをベンチに置いてきてしまったので、仕方なくジャージの袖で涙をぬぐってやる。
3年生が引退してからというもの、利央が泣く回数が増えた気がする。
先輩たちはたまに教えに来てくれるが、指導は甘いわけじゃない。理由はそれかと思ったが・・・
「準さん、に、うっ」
「・・・無理してしゃべんなくていいよ」
どうやらそうでもないらしい。
えぐっえぐっとえづいて、中々しゃべることが出来ない利央の頭を撫でてやると、こくりとうなずいた。
「落ち着いた?」
「うん」
「そ。で、何があったの」
「準さんがもう俺のミットには投げないって・・・うぅっ」
言われた時の状況を思い出しているのか、利央の目はまたうるうるしている。
「なんでまた・・・。」
「準さんなんて知らない。和さんがずっとキャッチャーやればいいんだ」
「もう!そんなことでめそめそしない!」
「そんなことって・・・」
粗方準太が利央に下手くそとか言って、それで利央と口論になって投げないとか言ったんだろう。
それで利央が拗ねたってとこだろう。そりゃ和さんはすごかったよ。キャッチャーとして立派だった。
でも、まだ1年生の利央に和さんみたいにやれっていうのは無理がある。
準太のやつはまだ和さん離れ出来てないらしいし。あっちにも喝入れなきゃなぁ。
「だって和さんがキャッチャーだったんだよ?利央が劣るに決まってんじゃん」
「ひどいよー」
「よく聞く!『まだ』って言ってんの!せっかくその背と長い手足持ってんだから、
それくらいでしょげない!頑張って練習すれば和さん越えれるかもしれないんだよ?」
「別に俺、和さん越えようとか思ってないし・・・」
「じゃあなんなのよ」
「俺はただ、準さんに認められたくて」
この子は・・・和さんと自分を照らし合わせてはいないわけだ。よくわかんないとこだけ理解してるんだから。
私は、利央の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「じゃあはっきり言ってきな」
「・・・ふぇ?」
「自分は和さんじゃありません。でも準さんとバッテリー組みたいんですって」
「無理だよぉ」
「無理じゃない!」
「痛っ」
ぺしっと軽く頭を叩く。それでもまだ不安らしい。極限まで眉毛を下げて私を見ている。
「大丈夫。」
そう言って笑ってやると、とたんに利央は元気になった。
「俺、行ってくる。」
「うん。頑張れよ。馬鹿利央。」
「酷いよ先輩!」
立ち上がって走って行く利央の背中を見届けて、ドリンクでも作ろうか。
そう思って私も戻ろうとしていたとき、急に振り返った利央と目が合った。
「ありがとう先輩!俺、先輩のこと大好き!」
「はぁ?」
Love or Like?
(「調子良いんだから」)
(20100904)
年下でヘタレってツボすぎる
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